キャリアアップと年収アップを目指す看護師のための資格解説!

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看護師がキャリアアップのために取得する資格は多岐にわたりますが、大きく分けて「専門性を高める資格」「管理能力を高める資格」「看護師以外の業務に広がる資格」の3つに分類できます。ここでは、それぞれの資格について詳しく解説します。


1. 専門性を高める資格

特定の看護分野において、より高度な知識と技術を習得し、実践能力を向上させるための資格です。年収アップに直結しやすいだけでなく、自身の専門性を確立し、キャリアパスを明確にする上で非常に重要です。

1-1. 認定看護師 (Certified Nurse / CN)

日本看護協会が認定する資格で、特定の専門分野において、熟練した看護技術と知識を活かして実践・指導・相談を行います。臨床の場で直接的に患者ケアの質の向上に貢献することが期待されます。

  • 取得要件:
    • 日本国の看護師免許を有すること。
    • 看護師としての実務経験が通算5年以上あり、そのうち3年以上は認定看護分野の実務研修であること。
    • 日本看護協会が定める認定看護師教育課程(計800時間、6ヶ月〜1年程度)を修了していること。
    • 認定審査(筆記試験)に合格すること。
    • 特定行為研修修了が必須となる分野もあります。
  • 役割:
    • 実践: 特定の看護分野において、質の高い看護ケアを実践する。
    • 指導: 看護実践を通して、他の看護師に対し指導を行う。
    • 相談: 看護ケアについて相談を受け、助言を行う。
  • 主な認定分野(2025年現在。分野統合や名称変更が進んでいます):
    • 救急看護: 救急医療現場における病態に応じた迅速な救命技術、トリアージ、災害時における急性期の医療ニーズに対するケアなど。
    • 皮膚・排泄ケア: 褥瘡(床ずれ)などの創傷管理、ストーマ(人工肛門・人工膀胱)や失禁などの排泄管理、セルフケア支援など。
    • 集中ケア: 生命の危機状態にある患者の重篤化予防、二次的合併症の予防、早期リハビリテーションなど。
    • 緩和ケア: 痛み、呼吸困難、全身倦怠感、浮腫などの苦痛症状の緩和、患者・家族への喪失と悲嘆のケアなど。
    • がん薬物療法看護: がん化学療法薬の安全な取り扱いと投与管理、副作用症状の緩和、セルフケア支援、意思決定支援など。
    • 感染管理: 医療関連感染の予防・管理システムの構築、感染兆候がある者に対する薬剤の臨時投与など。
    • 糖尿病看護: 糖尿病患者の血糖コントロール、合併症予防、セルフケア支援、インスリン注射指導など。
    • 透析看護 / 腎不全看護: 慢性腎不全患者の透析治療管理、合併症予防、セルフケア支援など。
    • 手術看護: 手術を受ける患者の術前・術中・術後管理、手術室の安全管理、医療機器の知識など。
    • 認知症看護: 認知症患者の行動・心理症状(BPSD)への対応、認知症の進行予防、家族支援など。
    • 脳卒中看護: 脳卒中患者の急性期管理、リハビリテーション、合併症予防、再発予防、社会復帰支援など。
    • 慢性心不全看護: 慢性心不全患者の病態管理、症状緩和、セルフケア支援、生活習慣改善指導など。
    • 在宅ケア: 在宅療養者の主体性を尊重したセルフケア支援、多職種連携によるケースマネジメントなど。
    • 生殖看護(旧:不妊症看護): 不妊治療を受ける患者・カップルへの支援、生殖医療に関する知識とケアなど。
    • 摂食嚥下障害看護: 摂食嚥下障害を持つ患者の評価、食事形態の調整、嚥下訓練指導、誤嚥性肺炎予防など。
    • 新生児集中ケア: 低出生体重児や疾患を持つ新生児の集中ケア、家族支援など。
    • 小児プライマリケア: 小児の健康問題に関する初期対応、健康相談、予防接種指導、育児支援など。
    • がん放射線療法看護: がん放射線治療を受ける患者の身体的・心理的支援、有害事象への対応、放射線防護など。
    • 呼吸器疾患看護: 慢性呼吸器疾患患者の呼吸管理、症状緩和、セルフケア支援、酸素療法指導など。
    • 乳がん看護: 乳がん患者の診断時から治療、緩和ケア、再建までの一貫した看護、心理的サポートなど。

1-2. 専門看護師 (Certified Nurse Specialist / CNS)

日本看護協会が認定する資格で、認定看護師よりもさらに高度な実践能力と、複雑な状況における倫理的調整、研究、教育、コンサルテーションといった役割が求められます。看護分野の発展に貢献するリーダー的存在です。

  • 取得要件:
    • 日本国の看護師免許を有すること。
    • 看護系大学院修士課程を修了し、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計38単位)を取得していること(概ね2年間)。
    • 実務研修が通算5年以上あり、そのうち3年間以上は専門看護分野の実務研修であること。
    • 認定審査(書類審査・筆記試験)に合格すること。
  • 役割:
    • 実践: 特定の専門分野において、質の高いケアを実践する。
    • 相談: 患者・家族や他の看護師からの相談に応じ、専門的な視点から助言を行う。
    • 調整: 患者ケアに関わる多職種間の連携を調整し、質の高い医療の提供を促進する。
    • 倫理調整: 複雑な倫理的課題に対し、患者の権利擁護と最善の意思決定を支援する。
    • 教育: 他の看護師や医療スタッフに対し、専門分野に関する教育を行う。
    • 研究: 自身の専門分野における看護実践の質の向上に資する研究を行う。
  • 主な認定分野:
    • がん看護: がん患者の身体的・精神的な苦痛緩和、QOL向上、意思決定支援、家族支援など。
    • 精神看護: 精神疾患患者への高度な看護、リエゾン精神看護(一般病棟での精神的な問題への対応)など。
    • 地域看護: 産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域で、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
    • 老人看護: 認知症や嚥下障害などのある高齢者のQOL向上、尊厳を守るケアなど。
    • 小児看護: 子どもたちの療養生活支援、家族支援、発達段階に応じたケアなど。
    • 母性看護: 女性と母子に対する専門看護(周産期、女性の健康、リプロダクティブヘルスなど)。
    • 慢性疾患看護: 生活習慣病予防、慢性疾患管理、健康増進、療養支援など。
    • 急性・重症患者看護: 緊急度や重症度の高い患者への集中的な看護、患者・家族支援、医療スタッフ間の調整など。
    • 感染症看護: 感染予防と発生時の対応、感染症患者への高度な看護、感染管理システムの構築など。
    • 家族支援: 疾病や健康問題を持つ患者とその家族に対し、心理社会的側面からの支援、家族間の調整など。
    • 在宅看護: 在宅療養を円滑に進めるための高度なアセスメント、多職種連携、セルフケア支援など。
    • 遺伝看護: 遺伝性疾患を持つ患者や家族へのカウンセリング、情報提供、意思決定支援など。
    • 災害看護: 災害発生時における医療ニーズへの対応、被災者の身体的・精神的ケア、地域支援など。
    • 放射線看護: 放射線治療を受ける患者のケア、放射線防護、有害事象への対応など。

1-3. 特定行為研修修了者 (特定行為看護師)

医師の包括的指示(手順書)の下、特定された医療行為(特定行為)を看護師が自律的に行えるようになるための研修です。医療提供体制の効率化と、看護師の専門性向上が目的とされています。

  • 取得要件:
    • 日本国の看護師免許を有すること。
    • 厚生労働大臣が指定する研修機関で「特定行為研修」を修了すること(共通科目と区分別科目を履修。期間は半年~1年程度)。
  • 役割:
    • 医師の包括的指示(手順書)に基づき、医師の判断を待たずに特定行為(例:脱水症状の患者への輸液の実施、褥瘡の壊死組織の除去など)を行うことで、患者へのタイムリーなケア提供を可能にする。
    • チーム医療における看護師の役割を拡大し、医療の質と効率性を向上させる。
  • 特定行為の例(区分別パッケージとして21区分38行為がある):
    • 栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連
    • 創傷管理関連
    • 動脈血液ガス分析関連
    • 気管カニューレの交換
    • 人工呼吸器の管理関連
    • 経口挿管、抜管
    • 中心静脈カテーテルの抜去
    • 抗がん剤の投与
    • インスリンの投与 など

1-4. 3学会合同呼吸療法認定士

日本呼吸器学会、日本胸部外科学会、日本麻酔科学会の3学会合同で認定する、呼吸療法に関する専門知識を持つ医療従事者(看護師、理学療法士、臨床工学技士)の資格です。

  • 取得要件: 看護師免許を有し、医療機関における呼吸療法関連業務の実務経験2年以上、講習会の受講、認定試験合格。
  • 役割: 人工呼吸器管理、酸素療法、吸入療法、喀痰吸引など、呼吸器疾患を持つ患者への専門的な呼吸ケアを提供します。

1-5. 消化器内視鏡技師

日本消化器内視鏡学会が認定する資格で、消化器内視鏡検査・治療の介助に関する専門知識と技術を持つ医療従事者の資格です。

  • 取得要件: 看護師免許を有し、内視鏡に関する一定の実務経験、講習会受講、認定試験合格。
  • 役割: 消化器内視鏡検査や治療の準備、介助、患者ケア、機器管理など、内視鏡分野の専門家として活躍します。

1-6. がんゲノム医療コーディネーター(仮称、関連資格)

近年注目されるがんゲノム医療において、患者や家族への説明、多職種連携の調整を担う看護師の役割も増えています。特定の資格制度はまだ確立されていませんが、関連する知識を習得し、この分野で貢献する看護師の需要は高まると予想されます。


2. 管理能力を高める資格

病院や施設内でチームや部門をマネジメントし、組織運営に貢献するための資格です。将来的に看護師長、看護部長などの管理職を目指す看護師にとって重要です。

2-1. 認定看護管理者 (Certified Nurse Administrator / CNA)

日本看護協会が認定する資格で、管理者として優れた資質を持ち、医療機関における看護サービスの質の向上と組織運営に貢献できる能力を証明するものです。

  • 取得要件:
    • 日本国の看護師免許を有すること。
    • 看護師免許取得後、実務経験が通算5年以上あること。そのうち通算3年以上は看護師長相当以上の看護管理の経験があること。
    • 日本看護協会が定める認定看護管理者教育課程(ファーストレベル、セカンドレベル、サードレベル。合計510時間)を修了しているか、看護管理に関連する学問領域の修士以上の学位を取得していること。
    • 認定審査(書類審査、筆記試験)に合格すること。
  • 役割:
    • 看護組織のマネジメント、人材育成、人事管理、安全管理、財務管理など。
    • 看護サービスの質向上、労働環境の整備、医療事故防止策の策定と実施。
    • 経営層と現場の橋渡し役となり、組織全体の目標達成に貢献します。

3. 看護師以外の業務に広がる資格

看護師の知識や経験を基盤にしながら、専門分野を広げたり、異業種への転職を視野に入れたりするための資格です。キャリアチェンジやワークライフバランスの改善、あるいはさらなる高収入を目指す場合に有効です。

3-1. 保健師

国民の健康増進や疾病予防を目的として、地域住民や企業従業員、学校生徒などに対して健康相談や保健指導を行う国家資格です。

  • 取得要件:
    • 看護師免許を有すること。
    • 保健師養成学校で1年以上定められた学科を修了していること、または4年制の看護大学で保健師になるためのカリキュラムを修了し、看護師と保健師の国家試験をダブル受験すること。
    • 保健師国家試験に合格すること。
  • 役割:
    • 行政保健師: 保健所や保健センターに勤務し、地域住民の健康相談、特定健診・保健指導、感染症対策、精神保健福祉、母子保健など多岐にわたる活動を行います。
    • 産業保健師: 一般企業に勤務し、従業員の健康管理、健康診断後の保健指導、メンタルヘルスケア、職場環境改善などを行います。残業が少なく土日休みが多い傾向があり、ワークライフバランスを重視する看護師に人気です。
    • 学校保健師: 小・中・高校などに勤務し、生徒や教職員の健康管理、健康相談、救急処置、保健指導などを行います。

3-2. 助産師

女性の妊娠・出産・産後のケア、新生児のケアを行う国家資格です。女性の一生に寄り添う専門職です。

  • 取得要件:
    • 看護師免許を有すること。
    • 助産師養成学校で1年以上定められた必要な学科を修了していること、または4年制の看護大学で看護師課程と助産師課程の両方を修了し、看護師国家試験と助産師国家試験をダブル受験すること。
    • 助産師国家試験に合格すること。
  • 役割:
    • 妊婦健診、分娩介助、産後の母体・新生児ケア、母乳育児支援、育児相談、性教育など。
    • 病院の産婦人科だけでなく、助産院を開業することも可能です。

3-3. ケアマネジャー (介護支援専門員)

介護保険制度において、要介護者や要支援者が適切な介護サービスを受けられるよう、ケアプランの作成やサービス事業所との連絡調整を行う専門職です。

  • 取得要件:
    • 看護師を含む特定の国家資格(医療・福祉系)を有し、5年以上の実務経験(かつ900日以上)があること。
    • 介護支援専門員実務研修受講試験に合格すること。
    • 介護支援専門員実務研修を修了すること。
  • 役割:
    • 利用者の心身の状態や生活環境を評価し、個別のケアプランを作成。
    • サービス事業所との連絡調整、利用者の状況に応じたケアプランの見直し。
    • 医療と介護の連携を円滑に進める上で、看護師の経験が大いに役立ちます。

3-4. 社会福祉士

身体上・精神上の障害がある人や環境上の理由により日常生活を営むことに支障がある人に対し、福祉に関する相談援助を行う国家資格です。

  • 取得要件:
    • 福祉系大学で指定科目を履修し卒業、または一般養成施設で1年以上学ぶなど、複数のルートがあります。
    • 社会福祉士国家試験に合格すること。
  • 役割:
    • 病院では医療ソーシャルワーカー(MSW)として、患者の退院支援、転院調整、社会資源の活用支援などを行います。
    • 高齢者施設、障害者施設、児童福祉施設、行政機関など、幅広い分野で活躍します。

3-5. 精神保健福祉士

精神に障害がある人に対する社会復帰の促進や、生活支援に関する相談援助を行う国家資格です。

  • 取得要件:
    • 福祉系大学で指定科目を履修し卒業、または一般養成施設で1年以上学ぶなど、複数のルートがあります。
    • 精神保健福祉士国家試験に合格すること。
  • 役割:
    • 精神科病院、精神科クリニック、地域生活支援センターなどで、患者の社会復帰支援、就労支援、生活相談などを行います。看護師の臨床経験は、精神疾患を抱える方への理解を深める上で強みとなります。

3-6. 産業カウンセラー

企業などで働く人々のメンタルヘルス対策やキャリア形成支援、人間関係の改善など、心理的側面からサポートする資格です。国家資格ではありませんが、企業での需要が高い資格です。

  • 取得要件: 日本産業カウンセラー協会が実施する講座を修了し、試験に合格。
  • 役割: 企業内の相談室や健康管理室などで、従業員のストレスチェック、カウンセリング、休職・復職支援などを行います。保健師と合わせて取得することで、より専門性の高いサポートが可能です。

まとめ:キャリアアップ資格取得の考え方

これらの資格は、看護師としての専門性を深めるだけでなく、キャリアの選択肢を広げ、年収アップに繋がる可能性を秘めています。資格取得を考える際は、以下の点を考慮しましょう。

  1. キャリアプランとの整合性: 自分が将来どのような看護師になりたいのか、どのような分野で活躍したいのかという長期的なキャリアプランと、取得したい資格が合致しているかを確認しましょう。
  2. 実務経験との関連性: 多くの資格は、取得要件として一定期間の実務経験を求めています。現在の職場での経験が、希望する資格取得にどのように役立つか、足りない経験は何かを把握しましょう。
  3. 時間と費用: 資格取得には、教育課程の受講費用や教材費、受験料、そして学習のための時間が必要です。働きながら学習を続けるためには、職場からのサポート(奨学金制度、勤務時間の調整など)も確認すると良いでしょう。
  4. 需要と将来性: 取得を目指す資格が、将来的にどれくらいの需要が見込まれるか、その分野がどのように発展していくかを調査することも重要です。

自身のキャリア目標に合わせて最適な資格を選び、計画的に学習を進めることで、看護師としての専門性を高め、着実に年収アップとキャリアの充実を実現していきましょう。

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